10秒後に地震の揺れがくると分かったら、何をしますか。
気象庁が今月から「緊急地震速報」を始めた。強い揺れがくる前に地震の発生を知らせ、電車を止めたり、工場の操業を停止したりして被害をできるだけ小さくする。国土全域を対象にした世界でも例のない取り組みだ。
地震が起きると、発生と同時に出る初期微動のP波に続いて、大きな揺れをもたらすS波がくる。P波は秒速約7キロで進み、S波は約4キロだ。緊急速報は、この速度差を利用している。
震源に近い地震計がとらえたP波によって、震源の位置や地震の規模(マグニチュード)などを割り出して発表する。この速報が事業所などの受信機に届けられ、S波の到達時間や震度を知らせるシステムだ。
地震予知がむずかしい現状では、地震の発生を瞬時にとらえ、いち早く備えて被害を最小限に食い止める「リアルタイム防災」の重要性が高まっている。気象庁は、2年前から速報の試験運用を続けてきた。
速報の対象には一般の市民も含まれる。しかし、十分な理解がないまま始めれば、パニックなどを引き起こしかねない。当面は鉄道や工場、病院など特定の事業者だけに提供される。テレビやラジオ、自治体の無線などを通じて広く市民にも速報するのは06度末が目標だ。
試験運用中だった昨年7月、東京で13年ぶりに震度5クラスの地震が起きた。その際、都心部にS波のくる5〜10秒前に速報を出すことができた。
阪神大震災のような直下型地震では、いきなり大きな揺れがくるので、このシステムは使えない。だが、海のプレート境界で起きる地震だと、震源からの距離があるため効果が期待できる。
想定される東海地震ではP波の検知後、7秒ぼどで「静岡市は約10秒後に震度7」「東京都心は約40秒後に震度5強」などと速報できるという。
せっかくの速報を生かすには、日頃からの準備が欠かせない。いざという時に、「枕を抱えて逃げる」ということにもなりかねないからだ。
そこで参考になるのが、東京都立川市にある災害医寮センターの取り組みだ。揺れの到達時間に応じて行動の優先順位を決めたマニュアルをつくり、万一に備えて訓練を繰り返している。
手術室に設けたスピーカーから、「あと10秒で揺れます」といった音声が流れたとする。医師らは手術を中断してライトや器具を遠ざけ、患者が転落しないよう覆いかぶさって手術台を押さえる。
家でも学校でも会社でも、大きな揺れに備えた行動をあらかじめ決めておいてはどうだろう。真っ先にガスを消す。机の下に身を隠す。建物が押しつぶされても逃げられるようにドアを開ける---。
身の回りの安全を確認し、家族や仲間と話し合って役割を分担するのもいい。備えあれば憂いなし、である。